近年は先行きが不透明な時代で、製造業を取り巻く環境は急速に変化しています。市場ニーズは多様化し、製品ライフサイクルは短縮され、変種変量生産への対応力が企業の生き残りを左右する時代となりました。さらに、深刻な人手不足が現場にのしかかっており、熟練工の引退、若年層の製造業離れ、物価・人件費高騰といった構造的課題が重なり、これまでのやり方を続けることが困難になりつつあります。
なかでも、製造工程の最終段階に位置する外観検査は、出荷される製品の品質と信頼を担保する最重要工程です。多くの工場では、モーションコントロール製品やロボット製品の発展により、製品を搬送するなどのハンドリング作業の自動化は進みました。一方で、製品一つ一つの表面状態を確認し、欠けや異物、キズなどの欠陥を検知する工程が今もなお人力の目視検査に委ねられている工場も少なくありません。
しかし、こうした目視検査は、「見逃しのリスク」を常に抱えています。人の目は非常に優れている一方で、疲労や集中力の低下、属人的な判断基準といった要素に影響されやすく、検査の精度や安定性にばらつきが生じてしまうのです。例えば、同じ製品を同じ作業者が午前と午後で検査しても、判定結果が微妙に異なることすらあります。
また、同じ製品を異なる人が検査しても良品と判定する人もいれば、不良品と判定する人もいます。属人的な判定基準はあいまいになってしまいます。加えて、多品種・小ロット化が進む中で検査対象のバリエーションが増え、作業者への負荷は増すばかりです。
「外観検査にかかる人件費や時間的コスト」も無視できません。仮に1日1,000個の製品を目視検査する場合、1個にかかる検査時間がわずか10秒でも、合計で2時間半以上の検査工数となります。これが複数ライン、複数シフトで稼働している場合、年間では膨大な人件費と時間が費やされていることになります。しかも、その努力の積み重ねが、必ずしも100%の不良検出を保証するわけではありません。
さらに大きなリスクは、「不良品の市場流出」です。一度でも不良品が顧客の手に渡れば、その影響は単なる返品・再納品にとどまりません。特に現在はSNSやレビューサイトの影響力が大きく、たった一つの品質トラブルが数千、数万の目に触れるリスクがあり、クレーム対応や風評被害は、目に見えない大きなコストとして企業の信用を損なう恐れがあります。
こうした状況に対し、有効な解決策として期待されているのが、画像処理技術を活用した外観検査の自動化です。画像処理を使えば、製造業の収益性を上げることが可能になります。カメラが撮影した画像に対して定量的な基準で判定を行うため、作業者の熟練度や状態に左右されず、常に安定した検査が可能になるからです。一定の検査精度を超える必要がある製品や、繰り返し同じ検査を行う製品に対しては、特に効果的です。
画像処理による自動検査のもう一つの強みは、人材不足への柔軟な対応力です。生産量が急増する繁忙期でも、シフトの調整や作業者の確保に頭を悩ませる必要がありません。ラインを増設しても検査員を新たに雇う必要はなく、安定した品質を保ちながら24時間体制での検査も可能になります。結果として、現場の負担を大きく軽減できると同時に、働き方改革にも寄与します。
また、外観検査の自動化はコスト面でも恩恵が大きく、検査員の人件費削減だけでなく、不良品の早期検出による再加工・返品コストの低減にもつながります。結果として、製品の歩留まりが向上し、1個あたりの収益性が改善されるのです。検査員による目視検査は"コストセンター"と見なされがちでしたが、画像処理検査を導入することで、品質を守る「保険」に変化し、万が一のリスクに備えることができます。
加えて、画像処理検査は検査時の画像データを保存することができるため、トレーサビリティを確保するうえでも非常に有効です。万が一の不良発生時に、人の記憶ではなく、「その製品が検査時にどういう状態だったか」を画像データとして遡って確認することができるのです。これは顧客への説明責任やクレーム対応、社内品質改善の材料としても重要な価値を持ちます。検査は単に"見逃さない"ためだけの手段ではなく、"いざというときに備える"仕組みでもあるのです。
もちろん、自動検査システムを導入するには、現場のフローに即した形での構成設計、不良項目の明確化、必要な撮像条件の調整など、準備すべき工程があります。また、導入後も現場に合ったチューニングや運用支援が必要になる場合があり、単なる機器導入で完結ではありません。そのため、継続的なサポートやノウハウの共有が得られるパートナー企業の選定が成否を左右します。
検査工程は製造の中でも"守り"の工程と見られがちですが、視点を変えれば「品質を通じてブランドを支え、信頼を守る」ための"攻め"の戦略とも言えます。外観検査の自動化を通じて、企業(特に製造業)は人材確保の不安から解放され、品質に対する自信と安定を得ることができます。そして、繰り返し作業や単純作業ではなく、柔軟性や創造性が必要な仕事に人材を活用できるようになり、企業の競争力を高めることができます。
これからの製造業において、外観検査のあり方を見直すことは、経営の競争力を高めるための一歩です。検査にかける時間と労力を、単なるコストではなく「ブランドを守る投資」と捉えることができるかどうか――その意識の転換こそが、次の成長を左右すると言えるのではないでしょうか。
私たちは、外観検査・画像処理検査に関するエキスパート集団です。単なるメーカーではなく、画像処理アルゴリズム、光学技術、電気・機械の知識と経験を兼ね備える外観検査・画像処理検査装置メーカーとして、総合的なコンサルティングも可能とする、開発型エンジニアリング企業です。